Aさんは、仕事や散歩の帰りにおやつを買ってくることが好きで、また、そのおやつを同居のメンバーやサポーターによく振る舞ってくれます。

　その日も買ってきたあんドーナツを袋からだし、その時リビングに居合わせたWサポに「ハイ、どうぞ」と言いながら、目の前に差し出しました。

　しかし、そのあんドーナツを見ると三日月形をしており、その切り口にはくっきりと歯形が・・・。

　私もWサポも心の中で「うわぁ（汗）」と思いましたが、せっかくの気持ちを無下に断るのも悪いので、Wサポが「今はお腹いっぱいだから僕は大丈夫なので、Aさんが全部食べてください」とやんわり断りを入れると、その様子を見ていたI利用者が「それ歯形、ついてるね。男の人がかじったものは誰も食べたくないよ」と的確なフォローを入れてくれて、その場はAさんが引き下がりました。

　でも、Aさんは優しいよね、などと話し合っていると再びAさんがWサポの目の前にあんドーナツを差し出してきました。

　今度のそれは、三日月形こそしていなかったものの、明らかに最初に差し出してきたあんドーナツの両端のとんがった部分をさらにかじりなおして、全体をまっ平らに近い状態にしたものでした。

　Aさん的には、これはかじったものではありませんよ、その証拠にもう歯型はついてないでしょ、とでも主張したかったのでしょうが、私もWサポも再び心の中で「うわぁ（汗）」と思っていると、すかさずI利用者が「だから、男の人がかじったものは失礼だよ」と突っ込みを入れてくれたおかげで、Wサポが「本当にお腹いっぱいなので、僕は大丈夫です」と丁寧に断りをいれることができました。

　どんな事をしてでも買ってきたものを振る舞いたい。特に、お客様には。というAさんの優しさを垣間見た瞬間でした